こんにちは、高田です。
今日は、テニスコーチとして練習や試合で「取り組む姿勢」を評価してはいけないというお話をしたいと思います。
誤解のないように言っておくと、僕も練習や試合で前向きな自己表現をできる選手の方が好きです。
だから、決してそれを軽視しているわけではありません。
ただし、ジュニアスポーツチームや部活動の現場で、いわゆる「やる気」や「姿勢」を選手の評価軸としているチームははっきり言って時代錯誤だと思います。
なぜそのように考えているのか、では何を評価軸にすればいいのか、テニスコーチとしての経験をもとに考えてみたいと思います。
なぜ未だに「やる気」や「姿勢」を評価する文化がなくならないのか?
「私たちは結果よりも、目標に対して意欲的に取り組む姿勢を大切にします!」
たまにこのような謳い文句の学習塾やスポーツ教室を見かけます。
一見、結果を出すことを超越したような優れた指導をしているかのようにも思えます。
でも、「じゃあ意欲的に取り組む姿勢ってなに?」ってなりませんか?
声を出すとか、ガッツポーズをするとか、練習前に早く来て自主練するとか、積極的に質問に来るとか…
一般的にわかりやすい意欲的な姿勢を挙げるだけでもこれだけあります。
言ってしまえば、人の数だけ意欲的な姿勢があるし、そういう姿勢を表現するのが苦手な人もいます。
特に多感な時期の子どもにとって、「やる気を表現する=ダサい」と感じ、周りの目が気になりうまく自分の中の気持ちを表現できないことも多いでしょう。
では、なぜそのようなあいまいなことを評価の軸に据えるのでしょうか?
それは、そのほうが指導者が楽だからです。
例えば、指導者に「やる気であれば自然と大きな声が出るんだよ!」と言われれば、そのチームでは「意欲的な姿勢=大きな声を出す」になるのです。
「意欲的であれば声が出る」というのは決して正しくありません。ただの指導者の好みです。
そして、声が出ている選手の練習や試合を見て、「あの選手は素晴らしい」という評価をして悦に浸るのです。
「やる気」や「姿勢」が評価軸になるとすべてがピンボケする。
僕は、このやる気ファーストの評価はとても危険だと思っています。
なぜなら、指導者に評価されるだけで、一歩も目標に近づいていないというケースが生まれるからです。
人は認められたいので、必ず本質的に大切なことよりも人に評価されることを優先してしまうものです。
特に子どもであればその傾向は大きくなります。
「やる気」や「姿勢」はどこまでいっても定量的評価ができません。
だから、上の立場の人が「やる気があるとはこういうことだ」、「こういう姿勢で取り組むべきだ」と定義付けしなければ、評価軸にはなりえません。
ただし、定量的評価ができないものに定義付けをして無理やり評価軸をつくると、本質から大きくズレることになります。
例えば、指導者が「今日からやる気のある選手をスタメンにする。」と言い、練習中に大きな声を出している選手をほめたり、下を向いている選手を叱ったりし始めたとしましょう。
すると選手は当然スタメンになりたいのだから、声を出して常に前を向くようになるでしょう。
もちろん、声を出したり、前を向いたりすることが自然に良いパフォーマンスにつながる人に対してはこれでいいでしょう。
でも、先にも述べたように声を出すのが苦手とか、静かに考えるほうが良いパフォーマンスにつながるという人もいます。
もし、それでも「スタメンになるため」に無理やり声を出したり、前を向いたりしたらどうなるでしょうか?
確実にパフォーマンスは落ちます。
すると、最終的には指導者に気に入られることが第一になってしまい、指導者の思う「理想的な選手」が生まれる一方で、目標は遠のいていくのです。
このように、やる気ファーストの評価は、目標・過程の全てをピンボケさせるのです。
結果ファーストの評価軸にやる気ファーストな声掛けを!
では、何を評価軸として選手を評価すればいいのでしょうか?
結論から言うと、僕は結果を評価軸にすべきだと思います。
なぜなら、誰がどう見ても明らかだからです。
ただし、ジュニアスポーツに関しては特に結果主義になってはいけません。
心技体全てが高度成長期にあるジュニア世代は、結果よりもそれぞれの成長が最重要です。
だから、選手に対する声かけはやる気ファーストであるべきだと思います。
チームのルール(評価軸)は結果だけど、僕(指導者)はあなたの頑張りをしっかりとみているよという声掛けが、結果という目標を明確にしながらも選手の心技体の健やかな成長を促すのです。
このように、誰にとっても絶対的な評価軸を中心に据え、それによって生まれる角をとるように振る舞うことが指導者としては重要なのです。
まとめ
僕が指導しているレニックステニススクールでは、必ず練習コートをチーム内のランキングで決めるようにしています。
「上のコートで練習したければ自分より上のランキングの人に勝てばいい。」ということが明らかです。
ただ、そのうえで結果主義にならないように指導者は気を付けなくてはいけません。
ここが難しいところです。
結果というのは水物ですし、出るときは出るけど出ないときは出ません。
だから、結果を出すことが目標であっても、結果を出すことにとらわれてはいけません。
このあたりのニュアンスを上手に伝えられることが、優れた指導者の証だと思うのです。
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